大空の唄


頭の中が真っ白で何も考えられない…


魂が抜けてしまったかと錯覚してしまいそうな程、空っぽな思考の中に…


"バカには教えないよ"


勝ち誇ったような蒼空の顔と声だけが妙に鮮明に残る



「あ、絢音ちゃん?」


瑛さんが顔の前で手を振りながらあたしの名前をよんでいる、気がする


いったい、気のせいなのか、そうじゃないのかも分からない……



「痛ーい!!」



思考停止状態のあたしは急に身体に衝撃を感じ思わずそう叫んだ



「追いかけてみれば?」


「えっ?」


前を向き目が合ったのと同時にそう微笑む瑛さん



衝撃を受けた原因を辿って下を見るとその先には何故かあたしのジャンパーが落ちていて…


「蒼空、追いかけてみれば?


もうバイト上がる時間だし」



状況を理解できていないあたしに付け足すように言った瑛さんの手には何故かあたしのカバンがあった


追い…?追いかけ…?追いかける!!


それは良い案かもしれない



まだそんなに遠くには行ってないはずだし、いつも蒼空がどっちの方向へ向かっているかも大体分かっている


「瑛さん!天才!!」


「でしょ?」


馬鹿で単純で無鉄砲で思い立ったら後先考えず即行動するそんなあたしはこの時、本当に何も考えてなかった


この先に何が待っているかなんて考えもせずに


これから大変な事に巻き込まれるなんて知りもせずにただ急いで部屋を飛び出し蒼空の行方を追いかけた


蒼空め、あれで勝ったと思うなよ!!


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