イケメン倶楽部
取り出したのは携帯。
ピピッと器用に何かを打ち込んでいく。
動いていた指が止まったかと思うと、その手は耳元に向かった。
プルルルル───
電話か…
そう思った瞬間に手元にあった携帯が震えた。
もちろん着信は葵。
向こう側にいる葵を見ると、俺が中々出ないからなのか、顔が段々泣きそうになっている。
前ならこの着信が鳴り終わるまで、ひたすら我慢していたけれど…
今なら出られる気がする。
葵と話がきちんと出来そうな気がする。
すう…と深く深呼吸してから、ゆっくりと通話ボタンを押した。
「もしもし…?」
「る…琉依……?」
不安そうで
でも何処か嬉しそうなその声が、俺の脳内を駆け巡った。
「ひ、久しぶり…だね…!」
「…葵。」
「アメリカはどうだった?」
「葵」
「何ヵ月ぶりだろ……?ね?」
「葵…!!……ちゃんと話聞いてくれよ…」
「…嫌」
「え…?」
「別れ話なんか……聞きたくない…!!!」
葵の声が頭に響いた。
しばらく無言が続いた後、葵が小さく謝った。
「ごめん…」
「葵……」
「お願いだから…別れるなんて言わないで………」
切なそうにそう呟く葵を見ていると
今まで我慢していた糸がプツリと切れた。