ラヴレス










「いやだっいやだいやだいやだああああああああああああああああああああああああああああああああ――――!」


秘書を連れたキアランが用意しておいた智純のパスポートを手に「こころの家」を訪ねてきた。

途端、日曜日で家に揃っていた子供達からそんな悲鳴が上がる。

そして子供達は、あろうことかキアランにポケモン技を描け始めた。

そのなかには元気になったみさとも居てキアランは多少なりともショックを受けている。


「…すまんの」

じーさんが笑いながらキアランを客間へと避難させた。
それでも、子供達はギリギリと歯軋りをするような勢いで、キアランと秘書を睨み付けている。

それを遠目で眺めていた智純と一瞬だけ目が合ったがすぐに逸らされた。



(―――当然か…)


結局、脅迫して連れ去るようにイギリスへと連れ帰ることになった。

あと二日でチェックアウトするあのホテルで智純を脅してから、まだ一日半しか経っていない。

智純からは、一度も口を聞かなかった。

ただ、キアランに指示されたように黙々と荷物を纏め、育ての親にその旨を説明した。







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