ラヴレス








智純はその朝、随分と早く目を覚ました。

まだ外は重厚に暗く、朝日はその気配すら見せていない。

もぞもぞと隣で寝ていたカンタがみじろぐ。
智純は捲れている布団を直してやりながら、その短い頭を撫でた。


カンタだけではない。
智純の周りを、子供達がぐるりと取り囲んでいた。

北枕だけはしないように、と言いつけたせいで、ひっちゃかめっちゃかの並びになっている。

子供達は、昨夜から智純の傍を離れたがらなかった。



「…全く、」

たかがイギリスに飛ぶだけだ。

今生の別れではない。

キアランだって、「いつか帰る」とカンタと約束した。

母に縁ある人を訪ねて、旅行に行くのだと考えればいい。

それなのに、子供達は大袈裟だ、と智純は暗闇のなかで苦笑した。


(―――でも、)

それでも、智純には腑に落ちないものがあった。

或いは智純のその疑問を、子供達は敏感に感じ取っているのかもしれない。


イギリスに行き、キアランの叔父に会う。

それが彼の望みだと、キアランは言った。

愛した人の忘れ形見の私を一目、と。

そのままあちらに住み着くわけでもないのに、キアランの表情はそう物語っていない。







< 127 / 255 >

この作品をシェア

pagetop