ラブ☆ヴォイス
「ってことは別の意味もあるんでしょ?教えてよー!」
「お前はいいから手元見ろ。」
「あっくんのケチー!」
「甘やかすのは後だ。メシは手抜くな。」
「抜かないよーっだ!」

 唯は料理の手を抜かない。いつでも優しい味で迎えてくれる。
 山積みだった仕事がようやく落ち着き、やっと取れた時間。…待ちわびていた、この日を。すぐそばに、触れられる距離にいる。本来ならば隣に住んでいるのだからいつでも会えるはずなのに、不定期かつ不規則な仕事故に、なかなか会えない。というか、会わないようにしてた部分もある。―――会ってしまえば、仕事に向かえない気がしていた。
 こいつは、無自覚のうちに俺を甘やかすから。〝甘やかしてやる〟なんて言ってるけど、甘やかしてるのは俺じゃない、あいつだ。だから、甘えないために会うのをやめた。

「俺の出番終わりだよな?」
「うんっ!手伝ってくれてありがとう!あとはやっちゃうからソファーで休んでて?」
「ああ。」

 久しぶりに会ったっていうのにこの気の遣いようだ。どんだけ俺に休んでほしいんだ、お前は。そんなことを思いながら寝室に戻って着替え、あいつのメシを待った。
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