ラブ☆ヴォイス
「華!あっくんはどうでもよくない!」
「唯にとってはね。」
「ていうかあたしの大好きな先生をあっくんが…やばい眠れない!」
「良かったわね、講義に集中できそうで。」
「そういうことじゃない!」

 華の嫌味は無視して、唯は妄想を繰り広げる。

「だってさ、あんな低い声でさー時々甘くて。だけどラジオなんかじゃ思いっきり子どもみたいに笑ってて。しかも顔だってイケメンなんだよー?あんな声で好きとか言われたらホント死ねるー!」

 『ハニメロ』の先生役ならばきっと、甘い台詞のオンパレードである。それを考えるだけで、唯の頬はまたしても盛大に緩んでしまう。

「声優はイケメンである必要なんかないのに。」

 それは確かにそうかもしれないけれど、と唯も思う。でも実在するのだ。顔はイケメン、声はイケボの人が、同じ世界に。

「声がイケメンでおまけに顔もイケメンなんだよー…ホントどうすればそんな完璧な人存在するわけ?」
「知らないわよ。ていうかあくまであんたにとって完璧であって、あたしは別に興味ないわ。」
「華は彼氏がいるからじゃん、そんなの。」
「あたしは不毛な恋はしたくないの。声優に恋したって叶わないじゃない、絶対。」
「……。」

 そこを言われると弱い。『不毛な恋』であるという自覚はちゃんとある。叶わない恋である確率が高い、ということは分かっている。それは恋を諦める理由にはならないけれど。

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