ラブ☆ヴォイス
 俺も横を向き、唯の寝顔と向かい合う。薄く開いた唇を目の前にするとどうもだめだ。塞いでしまいたくなる。

「ん…。」

 ほんの少しの間だけ、唇を重ねた。長くすると苦しくなって起きるだろうし。唇を離しても相変わらず能天気に寝ている唯。…眠り姫にはなれねぇな。
 もう一度、唇にキスを落とす。ちゅ、ちゅとわざと音を立てて2回ほど。…やべぇ、なんだか止まらねぇ。
別に寝込みを襲う趣味はない。俺の名誉のために言っておくが。それでもちょっとしたイタズラ心ってやつだ。そもそも無防備に俺の気も知らないでぴったりくっついてくるこいつもこいつだ。
 次は頬に、そして両瞼にキスをする。そして額。キスを落とし、額を重ねる。
 寝顔は変わらない。あどけない表情。起きていても子どもっぽいのに、眠ると本当に子どものようだ。

「…可愛いよな、お前。」

 可愛い。出会ったときからこいつは小動物みたいで可愛かった。今は色々と頑張っているらしく、その可愛さには磨きがかかっている。

「頑張んなくても別にいーんだけどな、俺は。」

 変に大人にならないでくれ。俺が焦るから。これは正直な気持ちだ。
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