ラブ☆ヴォイス

ただ、会えないだけ

(3日ってこんなに長かったっけ…?)

 そんなことを一人っきりで唯は思う。あっくんの部屋(というかあっくんの家)は一人きりじゃ広すぎる。

(どんどん欲張りになっていくなぁ、あたし。)

 プロポーズをされて、婚姻届を出し、新婚生活というものが始まった矢先の、あっくんの仕事の遠出だった。あっくんの出演するアニメのイベントが日本各地で行われるということで3日間家をあけることになっている。
 付き合っている間も、その前も会わないことはあった。特に付き合い始めの頃はあっくんの仕事の忙しい時期と被っていて、連絡もろくに取らないときだってあった。3日間会わないなんてことはよくあることだったはずなのに。

(…ずっとあっくんの家に入り浸りになってからは…なかったのかも。)

 イベントで夜遅くに帰ってくるということはあったものの、ここ1年、つまりはほぼ同棲状態になってから顔を合わせないことはほとんどなかった。だからこそ強く、あっくんの不在を感じてしまう。久しぶりと言っても過言ではないくらいにただ、ひたすらに〝寂しい〟。

「…寂しいなら、連絡取ればいいだけの話なんだけど…ね。」

 付き合っているときならば言えただろうとも思う。でも今はそうではない。結婚して、一つの安定が手に入ったはずなのに、それでもこんなに心がざわつく。浮気を心配しているわけでも、あっくんの気持ちを疑っているわけでももちろんない。

「どうしよう…なんか、…あたし、重い。」

 結局連絡したいのに考え過ぎてできずに、もやもやとしたままあっくんの帰りを待つことになってしまった。

ブーブーブー…

「で、電話!」

 慌てて画面をタッチすると、そこにはあっくんの名前があった。
< 393 / 396 >

この作品をシェア

pagetop