ラブ☆ヴォイス
「んじゃー俺はそろそろ帰ろうかなー。」
「荷物ばっか置いてきやがって。」
「ユイちゃんのこと無下にしないよーに。」
「ベッド譲っただけかなり面倒見てるけどな。」
「はいはい。じゃーおやすみ。」
「…気を付けろよ。」
「ああ。」

 パタンと小さく、玄関のドアが閉まる音が響いた。明博は今一度、寝室に戻る。
 スースーと小さな寝息だけがやけにクリアに聞こえる。近付けば、無防備な寝顔が視界に飛び込んでくる。

「童顔だよな…こいつ。」

 小柄で華奢なところもガキくさい。寝顔はさらにぐっとガキ度が増す。

「あ…っくん…。」

 不意に名前を呼ばれて顔を覗き込む。起きたのかと思ったけれど、今のはやはりただの寝言だ。

「寝言でまで呼ばなくていいっつーの。」
「す…き…。」
「…はいはい。」

 寝ても起きても『すき』しか言わない変な女だ。

「言うこと変わんねーじゃねぇか。」

 バカな寝言に受け答えしてしまっている自分がアホくさくて、つい笑みが零れた。不意にタツの言葉が蘇ってきて、それは苦笑に変わった。

「怖がってなんか…ねーよ。」

 言い聞かせるように、言った。本気になんかならない。恋愛に現を抜かしている暇なんかないのだから。
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