月花の祈り-宗久シリーズ小咄3-
声の在りか
クリスマスイブを過ぎた翌日、僕は先輩に会いに家を出た。



「お父さん、行ってらっしゃい!お土産買って来てね!」


クリスマスプレゼントである、ヒーロー物の玩具ロボットを抱え、電車に乗る僕に手を振る息子。

お土産…まだ玩具が足りないと?



お父さん、物見遊山で行く訳じゃないんだけれどなぁ。




「違いますよ?お父さんはお遊びで行く訳ではありませんよ?」


息子の前に身体を落とし、妻が言い聞かせる。


「じゃあ、何をしに行くの?」

「それは…そう……それはね?」



……返答に困る事ですか。



「瑞江さん、いいですよ…」

……遊びでも。

土産も忘れずに買って来ますから。








電車を三度程乗り継ぎ、先輩が住む街へ着いた頃には、すでに夕方の時刻であった。


本当は飛行機で来ようと考えたが、チケットがとれない結果となったので諦めるしか無かったのだ。



こじんまりとした改札を抜け外に出ると、自然と大きな伸びが出た。

長い時間座っていたから、身体が固まってしまいそうだ。




伸びを戻しつつ、辺りを見渡して見る。


景色は、一年前と何も変わってはいない。
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