天然色写真
１章
「佐伯さんの瞳、茶色いんだね」


背の低い、その目線に合わせるために前屈みになり、顔を覗き込むように話しかける彼の姿からは、彼女の気を引こうとしているのが誰から見ても明らかだった。


きっと、彼は元から隠す気もないのだろう。



「髪も色素うすめだし、キレイ」


そう言いながら柔らかな長い髪に触れようとした彼の手をするりとやり過ごすと、彼女はかわいらしい微笑みを返した。


うつむき加減で上目遣いの、見ようによっては照れているとも取れる、でもどこか拗ねたようなその表情を向けられては、相手が彼でなくても舞い上がってしまうだろう。



彼は機嫌を伺うような目線を向けたあと、冗談めかして言った。


「オレは髪真っ黒だから、うらやましいよ」


明るく朗らかな彼の笑顔は、彼女の可憐さと相まって眩しいほどだった。



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