チョコレート・キス
終章そして新たなる序章


佐倉辰馬は本当に身体自体はたいしたことなかったらしい。

あの後、放っておくこともできなくて(楓となっちゃんには本当にお人よしだと呆れられたけれど)、病院に運んだ。
意識を取り戻してすぐ彼は自分の身に起きた理不尽さを喚いていたけれど、楓が凄んで説教してくれたおかげで少しは反省してくれたらしかった。


それで利真が報われることもないだろうけれど、ちょっとは考えて欲しいと思う。

自分を本気で好きで居てくれた利真が生きた事実を。
覚えていて欲しいと思う。


その後は本当に久しぶりに三人で歩いて家まで帰って、晩御飯もみんなで食べた。

それが嬉しくて嬉しくて。
波樹があたしのことを「氷沙」って呼んでくれる。楓が笑ってくれる。

嬉しくて、そしてあたしはすっかり忘れていた。

< 77 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop