にじいろ奇跡
学校も最初のうちは凄く騒々していた。


クラスメートは私とルリが仲が良いのは知っていたから、同情というもので、私に声をかけてくるクラスメートが本当に辛かった。


郁人もうんざりしていたのか、優と一緒にあまり教室で過ごす事をしなくなっていた。


ルリの机には、ルリが大好きだと言った向日葵が飾られている。それを見るのが1番辛かった。


そのうち、花瓶は撤去されてルリの机も教室から消えた。


皆の中から『野沢瑠璃』が消えた。私のまわりに来ていた人達も少なくなった。


毎時間の休み時間、私は席について頬杖をつきながら左隣の何も無い空間を見つめる。元ルリの席があった場所だ。


「・・・」

「なんか、嫌な感じだな」


郁人が同じように空間を見つめながら、何とも無しに言う。


私の右隣の席に体重を預け、腕を組んで見ていた優が不意に口出しをする。


「所詮人間はそんなもんだよ。最初のうちは同情して、だんだん興味もなくなると、忘れていく」


苦しげにそう言う優の顔は凄く冷めていた。少し優の表情が怖いと感じて、何も言わず優を見つめた。


郁人もそう感じて居たのだろうか、優を険しい表情で凝視している。


「そんな顔するなよ」


私達に気付いた優は肩を竦め私の頭を撫でる。その手はやけに冷たかった。


「うん」

「優、今は違うだろ?」


目を伏せたが、郁人の言葉に優を凝視する。優は私の頭を撫でるのを辞めてまた腕を組んだ。


「まぁな。人間誰しもそんな奴ばかりじゃないって事は知ってるさ」


何時もの優の笑顔がそこにあった。


優もきっとその笑顔の裏には言えないような辛い過去が有るのだろう。無理には聞き出さない。


優が話したいと思うまで、私は待っていることにした。
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