Dear...
「起きてるかー武藤ー」

ぽん、と肩を叩かれ、顔を上げると、古典の先生が苦笑していた。
「…あ、すいません…寝てました」

「テスト範囲だからなー」

数学じゃなくてよかった、と思った。数学Bの橋本先生は、寝ていた生徒に反省文を書かせるのだ。面倒臭い。自分はテスト中に居眠りするくせに。それに比べて、古典の相沢先生は優しいし真面目で生徒から好かれている。やっぱり誠実な人間は好かれるというのは本当のことなのだろう。

斜め後ろで孝司がケラケラ笑っている。その割に、孝司のノートは几帳面に纏まっていた。


「いや、起こそうと思ったんだけどさー」

授業が終わった後も、孝司は思い出してはクツクツ笑っていた。
「笑うなよ、俺昨日遅くまで勉強してたんだからな、珍しく」
「はいはい、午後の惰眠は幸せ」

孝司はいつもこうだ、まぁ、そこが親しみやすい箇所でもあるのだが。
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