Dear...

重い愛はお好き

「孝司くん、久しぶりねぇ」

突然武藤家にやって来た孝司を、母さんは笑顔で歓迎した。

なんでも、孝司の母さんは、来週精神病院に入院することになったらしい。じゃあうちに、と母さんが出した提案に、孝司は『お言葉に甘えます。有難うございます』と見かけによらないしっかりした返答をした。


俺と、母さんと、中学生の弟。父さんは最近残業が忙しいだかで朝帰り。それに孝司を加えた4人で食卓を囲む。

「いや、マジでおばさんのメシ最高ですね」

「やだ、お世辞が上手になったわねぇ。いつでも作り方くらい教えてあげるわよォ」

母さんはやけに上機嫌だ。面食いめ。

「じゃあ、今度お願いします」
優しく笑う姿からは、あの空虚な感情は見えない。

「今日は泊まってくのか？」

「いや、悪いし」

「良いじゃん泊まってきなよ」
弟が、立ち上がる孝司のシャツの裾を引っ張った。

「折角悠希の部屋広いんだから、泊まって行きなさい、ね？」
また孝司は笑う。有難うございます、と。