夢の住人
1年も、モジモジし、 妄想の世界だけで喜んでいた人間が 選択を決断し、覚悟を決めると、事は2日で 足りてしまう。

RPGゲームでも、2日でラスボスまで、たどり着くには、相当、苦労するだろう?

そんな意味不明な事を考える精神状態のままボクは受話器のボタンを押そうとしていた。

多少、ボタンを押す指は震えていたが、押し寄せる津波のような感情は、それをも飲み込んでいった。



コール・・

コール・・

コール・・

コール・・



・・・・出ない



何故だと思った瞬間 彼女が直接電話口に出た。

初めて聞く声なのに ボクは彼女だと悟った




「ははじめまして、東上田高校2年の武内一也といいます。毎朝、千曲川沿いの道ですれ違っているのですが、ご存じでしょうか?」




思い上がった感情である。


目があっただけで覚えているはずもなく




ボクは素直に好きですと告白をした。


ボクにとっては、1年越しの告白。

彼女にとっては、突然の見知らぬ男からの 怪しい電話。

この恋の成功率はないに等しい。

そんな事は、わかっていた。

ただ、ボクは彼女に自分という存在を知らせたかっただけだったのかもしれない。


それでも救いは、彼女が優しい断り方をしてくれたこと。

突然の電話にも関わらず・・





今、彼女には好きな人がいるそうだ。


それでも、津波の勢いは止まらなかった。







「写真をください。
あと、もし、よろしければ、朝、おはようございます、とだけ、声をかけても、よろしいでしょうか?」


書いていて恥ずかしくなる言葉だ。




それでも、彼女は快く振る舞い、約束をしてくれた。




「明日の朝8時に、いつもの道で」

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