心臓に悪い料理店
一話 とんでもない店員① その1

昼食時、客のいない静かな店内に自動ドアが開く音が響いた。

「いらっしゃいませ〜っ!!」

言葉の後ろに音符でも付いていそうな勢いで、若い男性店員が笑顔で挨拶する。

「二名様ですね! どうぞ、こちらへ。注文が決まりましたら呼んで下さいね!」

早口でそうまくしたて、店員は人数分のコップに水を素早く入れ始める。
二人の女性客は店員に圧倒されながらも席に座り、メニュー表に目を落とす。
注文が決まり、店員を呼んでメニュー表に指で示した。
伝票にメニューを書き込むと、店員は厨房に向かった。
 
数分後、注文した物が運ばれるのが見えた。
店に入ってすぐ店員に圧倒され、顔を見る余裕がなかったが、盗み見ると爽やかな好青年の雰囲気を醸し出している。
人当たりの良さそうな店員に見えた。
彼女はいるのだろうか? と思いつつ、注文した物が盛ってある皿を受け取ろうと女性客の一人が手を伸ばした。
その時だった。

ボトッ

テーブルの上に何かが落ちた鈍い音が静かな店内に響いた。
硬直する客に気付かず、店員は明るい声で謝った。



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