そのオトコ、要注意。

ご対面



拉致られること数分。

周りの注目を浴びてるのも何もかも、あたしを運んでるこの男のせいだ。


「…あの。そろそろ本気でやめてもらえませんか」

低めの声を出してみるもスタスタと歩く足は止まらなくて。

…このやろう。
パンツなんかもう知るか!


覚悟を決めた次の瞬間――

ピリッと右足に走った痛みに、あたしは地を踏み締めているのだと気がついた。


はへ?

不思議に思って傍らの人物に目を向けると。

「着いたよ」

ほら、と言われ見上げると、確かにあたしの教室のプレートが。


ってことは、つまり…


「あれだけ暴れたのなら心配いらないね、実際立っても問題ないみたいだし」

あんなに帰りたがってたでしょ、と背を押され教室に足を踏み入れると唖然とした表情の環奈が目に入った。

他のみんなも同じような顔をして、あたしと『藤代祥弥』を必死に見比べていた。


…やっぱり、見てないわけないよねぇ。


なんてこった。



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