夢列車
とまぁ、暇な私は妄想を膨らませていた。

都会デビューした私のサクセスストーリーが紅白出場決定までいったところで、脳内現実は強制終了をくらう。

犯人は踏み切りのベル。高音が私をリアルに呼び戻しくさったのだ。

中学の卒業記念に買い換えた携帯を見ると、ホームに着いてから5分が経っていたことに気付く。

考え事をしていると、時の流れは速い。内容の是非に関係なくだ。

どうせ速いなら少しでも有意義に使いたい。

そう、結論すら出ない無意味な思考を巡らせる。列車がカーブを曲がって来た。

ん?

結論がないと無意味なのかな?

だってこの思考は特段誰かに話すわけじゃない。

目的ないただの暇潰しなのだ。

別に答えを求めているわけじゃないんだから、解答がないことを理由に無意味と判断はできないだろう。

むしろ、答えのない問いを考えることに意味があると言えないだろうか?

考えて脳のシナプス増やしたと思えば……。

うん。肯定的な答えが出た。

人間、ポジティブに考えれば幸せになれるものだから。

そう自分の考えに自画自賛な満足をした瞬間、目の前でドアが左右に開いた。

ヤバ! 来てたの気付かなかった!

私は大慌てで列車に飛び乗った。

「痛っ!」

――が弾き飛ばされた。

何かにぶつかって、ホームに不様に尻餅をつく私。

同時に、バサバサという紙が落ちる音がした。

視線を向けると、慌ててあちこちに散らばった紙を拾う男が。

(…………)

私の脳は停止した。
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