KING CASTLE

「ん…」

「おい、蒼井」

抱きしめられながらもぞもぞと動いたのが気になったのか、伊吹が声をかける。

それが遠くの方で聞こえた。


「チッ」

小さな舌打ちを鳴らしながらも、さっきまでの手の動きは変わっていない。

ゆったりとした一定のリズムで、頭を撫でる。



なんだ、意外に優しいんじゃん。

ほとんど意識が遠のきながら、そんなことを思った。


「明日からは会議、出ろよ」

伊吹の固い胸板の上で、小さくうなずく。

それを感じたのか、伊吹は小さく声を漏らして笑ったらしい。



王様は格好良くて、表裏が激しい。

その上衝突が多くて、
愛猫がいないとたちまち不機嫌。


結局はこの我が儘な子猫を、
大切にしているということ。


< 75 / 88 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop