忘却は、幸せの近道
「梨依ちゃん。
さっき、屋上にいたんです。」


「お、屋上?」


もっくんは、春奈さんの言葉に動揺してる。


動揺されてもすべて終わったこと。


「誰もいない病室にいたら、なんか屋上に行きたくなって。
怒られるかな?って、思ったんだけど。
屋上に行きたくて。
けど、それが間違いでもあったかな?」


「間違い?」


今度は、いっくんが渋い顔。


「屋上に向かいだしたら、なんか誰かにずっと囁かれてる感じがして。
逃げ出したいのに、足は屋上に行くのが止められなくて。
そしたら、すべて思い出したの。」


「梨依ちゃん、思い出しちゃったんだ。」


沙奈さんは、泣き出してしまった。


それがイヤでもあった。


誰かが涙を流すことになるのなら、私が我慢すればいいって。


私の幸せより、みんなの幸せ。


私は、それを望んだから。


気づかなかった。


それが、間違いだったなんて。


一時的な回避になるだけ。


やっと気づけた。


話して、苦しみを共有することが幸せにつながるだなんて。
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