社長のご指名
生半可な気持ちじゃなかった。





本当に欲しいと思った。





「ねぇ、紗衣が産まれてから章菜は笑った事ある?」


「ない。」





楽しくもないのに笑えるわけないじゃない。





「赤ちゃんはね、凄く敏感なのよ。気持ちを切り替えてない、塞ぎ込んでる、紗衣には章菜の心がお見通しなの。」





紗衣の寝顔を見るお母さんはやっぱりお母さんで…





「見て。こんなに可愛い顔して寝てるわ。知ってた?」





お母さんから紗衣に視線を移した。





頬には涙の後が残ってる。





小さな手はときどきピクピク動いて、スヤスヤと無防備な寝顔。





初めて可愛いと思った。





こんなに小さい紗衣に手を上げてたなんて自分が許せなかった。





「ふっ、ふえぇぇぇ。」


「笑顔で呼び掛けてあげなさい。紗衣も笑ってくれるから。」




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