僕等が保つべき体温の最大
涙はいつまでも止まらなかった。

圭一は結衣の部屋を出る事が出来ない。

どんなにもがいても、きっと答えなんか見つかるはずがない。

自分がたどり続けているこの線上が何処に向かうものなのかと考えても、ぼんやりとした霧みたいな視界が残るだけだった。

だだっ広いこの世界は、どこまでも拡がっているし、この先続く時間もきっと何処までも果てしない。

そんなデタラメな空間の中に結衣を探してみたり、また目を背けてみたり。

そんな事の繰り返しだ。ずっと。

だから泣いてしまおう。

圭一はそう思って涙を流し続けた。

自分の気持ちを少しずつほどきながら、その分ちゃんと苦しもう。

ようやく”今”の結衣を感じる事が出来たのだから。無くした分をちゃんと悲しもう。

「ゴメンな。俺は勝手で」

そうやって、祈るように涙を流し続ける圭一の背中をおばさんが押してくれた。

その温もりに助けられて圭一は部屋からでた。

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