僕等が保つべき体温の最大
「ただいま」

圭一は部屋にたどり着いた。

「おかえり」

とは、返ってこない。

ただ微笑んで座っている結衣がいるだけだ。

「毎日暑いな。ね?」

結衣は不思議そうに聞いている。

もしかしたら、結衣は暑さだとかも忘れてしまったのかもしれない。

そう考えたら何だかつらくなって、圭一は視線をそらしてしまった。

夏が暑いとか、ただそんな事を笑って分かり会いたい。

圭一の願いは差し詰めそんなところだ。

結衣はただ、微笑んでいる。

飲み物を取りに圭一は立ち上がった。冷蔵庫の中の野菜ジュースをグッと飲み干す。

”神木菜緒って知ってる?”

洋太の言葉を思い出す。

”すごく、いい娘だよ”

だから、何だというのだ?海にでも行けというのか?

バタン!

圭一は冷蔵庫の扉を強く閉めた。

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