僕等が保つべき体温の最大
ドアを開けると部屋の中は薄暗かった。

明かりを点けようかとも思ったが、圭一には結衣が寝ている事がわかったので、それをしなかった。

「はあ…」

テーブルに腰掛け、ため息をつく。

洋太の話しが、耳の中でコダマする。

どうして、あんな事を言うのか?圭一は時々洋太の考えている事が理解できない。

出来ないが頭に残る。

自分の中の不安と符合するからなのか、消化されないまま頭にこびりつく。

「はあ…」

結局でるのは、ため息だけだ。

ふと、圭一は部屋の中の異変に気付いた。

”キャンバスがない?”

結衣が毎日、向き合ってきたキャンバスが消えていた。

”結衣は、あきらめたのか?”

圭一は呆然として結衣の寝顔を見つめる。

その時、携帯が鳴った。”矢野紗梨奈”と表示されている。

圭一は何も考えられないまま、通話ボタンを押した。

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