僕等が保つべき体温の最大
「ああ、どうも」洋太は言ってきた。

そういいながら浮かべた笑顔は、どこと無く苦笑いのようにも見える。

黙って立ち尽くす菜緒は、この場を離れるかどうかを悩んでいた。

「圭一、捜してたの？」

「ああ、はい。いや…」

「どしたの？」

「落としたみたいで…」

そういいながら、菜緒は圭一のスケッチブックをチラリと見せた。

それを見て洋太は少し怖い顔をした。しかしすぐに戻って「大事にしてるから」早く返してあげな、と言ってきた。

もちろん、そのつもりだ。しかし”大事なもの”だと聞いて少し気になりもした。

菜緒はスケッチブックの中身を見ていない。悪いような気がしたから。

でも、それを見たらまた知らない圭一を知る事が出来るかと思ったら気になった。

「波多野君て絵が好きなんです？」

洋太は、また少し怖い顔になる。そして答えた。
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