僕等が保つべき体温の最大
「ただいま」

圭一が夜遅く部屋に戻ると、結衣は寝ないで待っていた。

「暑かったあ!大変だったよ」

結衣は笑顔で聞いている。

「花嫁さんも汗だくでさあ!」

「しかも、中庭で立食パーティーだって、ありえねえよ!」

圭一は、ひたすらしゃべり続ける。

しゃべりながら結衣の表情を見て取り、楽しそうかどうかを伺う。

もう、1年半。

二人のやり取りは、ずっとこうだった。

黙って聞いている結衣に、圭一はひたすらしゃべり続けるしかないのだ。

なぜなら。

1年半まえの事故で結衣の声は奪われてしまったから。

話す事が出来ない結衣に、今日も圭一はしゃべり続ける。




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