僕等が保つべき体温の最大
”サヨナラってなに?”

それは、突然あふれだした。

”言うのは簡単かも知れないけれど、言われた方はどうすればいいの?”

悲しみでもなく怒りでもないこの感情は、どこまでもとめどなく溢れ出す。

「サヨナラなんて…」

菜緒がしゃべりだす。

「サヨナラに意味なんてあるの!?」

言ってみれば”やり切れない”その思いは、菜緒にとってもどうしようもない。

「サヨナラの意味なんて…。そんなのただのサヨナラだよ。」

何を言っているのか?自分でも意味がわかっていない。

「サヨナラを大事にするなんて、それこそバカげてる!」

あるいは、馬鹿馬鹿しくても、そんなの承知で喚き続けたい。

「会いたい…」

突然だった。圭一がポツリと呟いた。

「俺は結衣と会いたいだけなんだ…」

簡単に見えるそのパズルは、たった一つのピースを失って、いつまでも歪んだ像を映す。

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