ちぇんじ☆
 一人ぼっちというのもヒマなので
 鏡を覗きこんでみる。
 相変わらず背後霊のように見える隼人くん。
 周囲に気が付かれないように小声で話しかける。

「寄り道して買い食いするなんて、マズイかな?」
(別にいいんじゃねえの?普段からやってるし)

 そっか、少し安心する。

(それにしてもチーズバーガーか。あっさりしすぎで好みじゃねえな)
「ごめんね、私は大好きなんだ」

(構わないけどさ。それより帰ってからのことを心配してるみたいだけど?)
「そりゃそうだよ、全然知らない人を相手に知らない人の演技をするんだもん」

(心配ねえよ)

 きっぱりと言い切る隼人くん。
 して、その根拠は?

(普段から「おう」とか「ああ」くらいしか会話しねえんだから)
「ん?仲悪いの?お母さんと」
(悪くはねえけど、しゃべることもないからな)

 私は家ではお母さんとはよく話すけどね。
 お父さんとはあまり話をしないけどさ。

「男の子って……そんなもんですかね?」

(さあな、おっと、来たみたいだぜ?俺と話してると変質者に見られるぞ?)

 私のテーブルの方に向かって店員がチーズバーガーセットをトレイに載せて歩いてくる。
 もう少し隼人くんと話していたい気がしながらも手鏡を鞄の中にしまい込む。
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