アニマル・コンプレックス


とりあえず、長い前置きをしてみたけれど。


…私、ただいま人生最大の不幸に見舞われています。




コトの起こりは、経緯はどうであれ言葉にすれば簡単だ。


マンホールに落ちた。


そう、通学中にふと道が無くなったと思ったら、マンホールが開いていてそのまま落下。
あ、経緯も至って簡単だったわ。


しかし、それだけならまだ救いはあった。
助けを呼ぶか、出口を探すかすれば出れるのだから。


今回はそうできないから『人生最大の不幸』なのだ。(人生語れる程、そんなに長く生きてないけど…)



「マンホールの下は普通、下水道なんじゃないの…?」


いや、普通はそうだろう。
道路の地下には大体、汚水が流れていると相場が決まっているではないか。


しかし、現在進行中で自分が置かれている状況はどうだろう。

汚水どころか、鬱蒼と茂る森がありました、なんて……。

意味が分からない。


上を見上げてみたら木々の間に、かろうじて青空が広がっているのが見えた。

…落ちてきたはずの穴が在りません。


「わーお、不思議だなー……。って、穴がなくちゃ帰れないじゃん……!」


穴!穴が無い!
まったくもって意味が分からない!



状況理解が出来なさ過ぎて、叫びたくなるのを通り越して冷静になってしまったくらいだ…。


「……とりあえず、森を出てみるか…」


このまま此処にいても、状況は変わらないだろうし。




「『トンネルを抜けたら雪国』なんてのがあったけど、『マンホールの下は別世界』だよコレェ…」


どんなミラクルだ!

嘆きながらも足を踏み出すと、水分を含だ柔らかい土が、ローファーを半分まで飲み込む。

柔らかい土のせいでガポガポと靴が抜かって、歩きづらい。

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