バトンクッキー
「ほら、できあがり」
原西が手のひらを上向きにすると、桜の開花の瞬間を撮らえた早送りのVTRのようにユニフォームがブワッと広がった。
「……」
水原はうつむきかげん。
「着てみろって、動きやすくなってるから」
原西がユニフォームを渡すと、水原はノロノロと袖を通しはじめる。
水原はグルグル腕を回したり、軽めのピッチングフォームをしたりしてユニフォームの着心地をチェックする。
「どうだ?」と、原西が心配そうに訊く。