バトンクッキー


 歩いただけなのに体が汗でベトベト。


 夏休み中の学校は静かなもので、野球部の部室に着くまで誰ともすれ違うことはなかった。


 いままで以上に部室はきれに整理整頓され、汗臭いおれを入るなよと拒否している気がする。


 ロッカーを開けると、おれの野球道具一式がバッグにまとめられ、あとは持ち上げて帰るだけの姿になっていた。


 犯人は水原しかいない。


 余計なことを……と思いながら自然とニヤけてしまう。


 外から金属音が響いてきて、ゴリの声が聞こえてきた。


「まったくアイツは……」

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