愛の雫
「うるせぇっ!!」


怒鳴り声と同時に、左頬に激痛が走った。


「……っ!!」


声にならない呻(ウメ)きがあたしから漏れて、口の中に鉄の味と鈍い痛みが広がっていく。


拳で殴られたんだと気付いたのは、その後すぐの事だった。


「これ以上叫ぶなら、声が出せなくなるまで殴るぞ」


耳元で低く囁かれた言葉に、防衛本能が働いたのかもしれない。


「わかったな?」


恐怖心と悔しさで唇を噛み締めながらも、もう泰人に従う事しか出来なかった。


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