愛の雫
しばらくすると、マグカップを手にした凪兄が控室に入って来た。


「……希咲」


凪兄に差し出されたマグカップを受け取った時、軽く触れた彼の手が赤みを帯びている事に気付いた。


あたしの視線を感じたのか、凪兄は自分の手を隠すようにして壁際に立った。


「温かいうちに飲みな……」


いつもと同じように穏やかな口調で言った凪兄は、いつもと変わらない優しい笑みを浮かべた。


彼のその表情に少しだけ安堵したあたしは、小さく頷いてからマグカップにそっと口を付けた。


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