わたしの、センセ
第三章 すれ違う想い
-悠真side-

教室から、さくらが車に乗り込むのを確認してから僕は、駐輪場に置いたバイクに向かった

車には、さくらの父親も乗っていて、車から降りるなり、さくらの頬を思い切り叩いて怒鳴っているのが見えた

さくらは下を向いて、ただただ怒られるのを我慢してた

じっと父親の怒りが通り過ぎるのを、待ってから車に乗り込んだ

好きでもない男と、勝手に婚約をして…結婚もしてないのに、ベッドに押し倒そうとするなんて…

完全にさくらの想いを無視してるじゃないか

僕はバイクに跨ると、自分の唇にそっと触れた

さくらの想いに応えられないって言っておきながら、キスをして…気づいたら僕のほうがさくらを身体を求めていたなんて

キスをする前までは、真央がアパートで待ってるってわかっていたのに

キスをしたら、真央の存在を忘れていた

「ひどい男だな、僕は」

真央とは違うドキドキ感とさくらの甘い匂いに、頭がクラクラした

まるでさくらの身体に媚薬が仕込まれているみたいだった

僕は、ヘルメットをかぶるとバイクを発進させた

アパートに着くと、携帯が鳴った

「松浦です」

『葉月さん、無事に家に帰ってきたわ。学校にいたんですって』

「そうですか」

『もう探さなくていいから。御苦労さま』

「主任も。夜遅くに、申し訳ありませんでした」

僕は携帯を切ると、「はあ」と息を吐いた

僕も学校に居て知ってます…とは言えなかった

たぶん、後ろめたい気持ちがあるからだろうな…なんて考えてしまう
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