わたしの、センセ
「何をする松浦!」

パパが怖い顔をして、センセを睨んだ

センセは、口元を緩めると、怖いくらいの爽やかな笑みでパパを見ていた

「娘に暴力を与えようとしてる父親を抑えているんです。女の子なんですよ? 顔に傷が残ったらどうするんですか? 心に消えない傷だって負ってるかもしれないのに」

センセの目が細く鋭くなると、パパを睨んだ

パパはセンセの手を払うと、スーツの襟を正しながら喉を鳴らした

「君は関係ないだろ」

「僕は葉月さんの担任です。生徒が悩んでいるのを放ってはおけませんから」

「悩む?」

パパの視線がわたしに向いた

テーブルに並べられている答案用紙が目に入ったのだろうか

パパの目がカッと吊り上がると、再び手が挙がった

スッとセンセがわたしの前に入るなり、パパの動きがぴたっと止まった

「なんだ…これは。真っ白じゃないかっ!」

パパが日本史の答案用紙を手に取ると、腕をプルプルと震わせた

「高校ごときの問題くらいわからないわけじゃないだろ! 一流の家庭教師をつけてるんだぞ」

パパがわたしを睨んだ

わたしは下を向く

パパっていつも威圧的に責めるから、言いたいことも言えないままになっちゃう

「『高校ごとき』ですか」

センセが片方の口の端を持ちあげて、呆れた顔になった

「酷い言われようだ。必死に勉強している生徒が聞いたら、さぞかし憤慨するでしょうね。貴方の言う『高校ごとき』の勉強に命を削っているのに」

センセ?

わたしはセンセの寒気が走る笑みに、全身の毛が逆立った

怖いよ、センセ…パパの怒鳴りより、もっとずっと恐ろしい

震えたくないのに、怖くて勝手にぶるぶると震えてきちゃうの

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