ゲイな彼と札束

マモルのいない、やけに静かなマンションの寝室。

あたしはそっと目を閉じた。

地元では一人で暮らしていたし、そのことに違和感など感じなかった。

だけど、この部屋に一人でいるといやに寂しい気がする。

もしかして、マモルは毎日こんな寂しさを感じながら暮らしていたのだろうか。

自惚れて傷ついたりしたくないけど、これだけは信じたい。

あたしは結構マモルに好かれていた。

あいつはゲイだから恋とは少し違うだろうけど。

でも、特別な女の子として、大事にされていた。

埼玉にいるというマモルの妹と同じくらい、家族のように思ってくれていた。

恋愛感情なんて、もう報われなくていい。

幸せになんてなれなくていい。

ただマモルと穏やかに生きていきたい。

そんなことを考えているうちに、あたしはいつの間にか眠っていた――。




< 190 / 233 >

この作品をシェア

pagetop