彼は甘くてほろ苦い
「あとでまた話そうか。とりあえず御飯を食べましょ?冷めると美味しくないわよ?さあみんな座って」
由紀が気を使って俺らに言う。
「そーだな。とりあえず飯食うか」
「「食う」」
比呂と隼人が声を揃えて言うからさすがに笑った。
俺はこいつらがいれば怖くねぇな。
まじ感謝するよ。

「どうどう?おいしい?今日はよくできたのよ~!!」
由紀が笑顔で言った。
「普通にうまいよ」
「うん、うまいね」
「おばさん料理上手~!!」
俺、比呂、隼人の順で由紀に言った。
「ほんと~?隼人君は口が上手ね~」
由紀は照れながら言った。
今日はこころのことは忘れよう。
俺は今を生きよう。
大丈夫。こいつらがいれば俺は大丈夫だ。

飯を食い終わり、俺らはTVを見ていた。
「隼人今日泊まってけば?もう遅いし。」
「あ、まじで?じゃあ裕の部屋で寝るかな」
時計を見ると9時。
もう遅いから隼人を泊まらせることにした。

「ねぇ裕?さっきのあれはこころちゃんのこと・・・?」
由紀が遠慮がちに聞いてきた。
「まーな。けどもう大丈夫。俺には由紀と比呂と隼人がいる。それだけで大丈夫だ。俺は小さかったから親父が死んだときは知らねぇ。由紀は俺と同じ痛みを知ってる。けどこんだけ明るいじゃん?」
俺がまだ3歳の頃。
親父は事故で亡くなった。
だから俺は親父の顔を覚えてない。
なのに由紀はなんてこともない顔をしてる。
まじすげぇと思う。
俺らをここまで育ててくれたから感謝してる。
「お母さんはね?お父さんが早くに亡くなったけど別に平気よ?だってあんた達がこんだけ立派に育ってくれたんだもん。あんた達がいなかったら・・・って考えると恐ろしいわ。お母さんが笑顔でいれるのはあんた達のおかげよ」
由紀はそう言うと泣いてしまった。
「これからは俺と比呂が由紀を守るから。な?比呂。」
「当たり前。由紀ちゃんは俺の自慢のお母さんだよ」
比呂と俺は由紀を抱きしめた。

この日からこころのことを思い出しても辛くはならなかった。
由紀のおかげで前に進めた気がする。
これからは自分のために生きよう。
そんで比呂と由紀を守って、隼人に恩返しをしてやろう。
こころは俺の初恋だ。
ありがとな、こころ。
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