美人薄命


コーヒーの香りの中に微かに感じる木の香り。

何時でも離れていきそうな意識を必死に引き留めながら、目をゆっくりと開けた。


目の前には自分の部屋とは違う光景…。

「…あっ!?」


「起きた?」


私の声に気付いた春人くんが振り返る。


「あ…あの、ごめんなさい。その…寝ちゃって。あと服ありがとう。」


立ち上がった時に落としてしまった服を拾って渡す。
彼はそれを受け取ると再び机に視線を戻した。


「別に。……ただ口は閉じたほうがいいと思うけど。」


彼の言葉に一気に顔が熱くなる。


「あのさ、暇ならコーヒー入れてくんない?今手離せねぇから。」


「あっうん。」



< 108 / 203 >

この作品をシェア

pagetop