側にいる誰かへ
「徹。俺達は不良じゃねぇ。俺達は俺達だ。弱い奴を痛めつけても何も面白くねぇ。強い奴を倒し、そうじゃない奴は守ってやりてぇ。だがよ、さっきの俺達はまるで逆じゃねぇか。情けねぇ。そう思わねぇか。」

徹は俺の問いかけに少し考えていた。

俺はため息をつき、空を見上げる。

空はどこまでも、広く、そして大きく、俺は自分がひどく小さな存在に思えた。

しばらくの沈黙の後、徹はそんな俺に話しをする。


「富塚。俺もお前と同じ気持ちじゃ。だが、しょげても始まらねぇ。俺達はまだガキじゃ。じゃけ、これからデカクなっていけばいいんじゃ。だろ?」


ネガティブな俺とは違い、こいつはいつも前向きだ。

その前向きさがアダになる事もあるが、今はこいつの意見が正しいと素直に思った。

過ぎた事は仕方ないさ。

「そうだな。次に同じ失敗はしないよ。」

「お互いにな。」

俺と徹はどちらともなく、お互いの拳をぶつけ合う。

それは男同士の約束。

拳に微かに残る痛みが心地良かった。


しばらく歩くと、ある分かれ道についた。

ここからは、お互いの進むべき道が違う。

先に、徹が俺に声をかける。
「また、明日な。」

大きく元気な声で。

俺は少し照れる。

「おう。覚えてたらな。」

俺は少し悪態をつき、何とか照れをごまかした。

徹は笑みを浮かべ、俺に背を向けるとゆっくりと家の方に歩いて行った。


遠ざかる背中。


その背中を俺は生涯忘れないであろう。


俺の親友であり、良き理解であったあいつ。


どんなに悔やんでも、あの時には戻れない。


次の日の朝、久しぶりに遅刻をしなかった俺。
チャイムが鳴り、教室に担任が入って来る。


また、くだらない授業が始まる。
いつもの情景。

俺は一つあくびを入れた。

しばらくの沈黙。

担任がなかなか喋らない。

ながいな…。

俺は机にひれ伏す。

寝ようと思い、まぶたを閉じたとき聞こえてきたのは、

徹の死の知らせだった。


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