それでも君と、はじめての恋を
「て、中途半端じゃんっ! もう出なきゃヤバいんじゃねぇの?」
「……は……ええっ!! もう8時過ぎてるの!?」
見上げた時計は8時5分を差していて、慌ててホットカーラーを取り外す。
「ふたりともー! そろそろ出なさいよー!」
1階からお母さんの声も聞こえて、急いで鞄の中身を確認しながら化粧ポーチを押し込んだ。
考えすぎた! 朝からモモのこと考えすぎた!
「ほら、着る順に制服並べといてやったぞ。褒めろ!」
「うんありがと早く出てって!」
「ヒドくね!? それが優しい兄に対する……ああっ」
おにぃを部屋の外へ追いやって、ドアを閉める。本当に着る順番通り、ベッドに制服を並べてくれたおにぃに心の中で感謝した。
「携帯ケータイッ! ああやばい遅刻する!」
ブレザーのポケットに携帯を突っ込んで、テーブルに置きっぱなしだったシルバーアクセを乱暴に取り上げる。
遅刻はマズイ! 本当にマズイ!
あと2回遅刻したら、また留年の危機にさらされるんだよ!