それでも君と、はじめての恋を
「帰るんでしょ」
気恥しそうに眉を寄せられてニヤニヤと口の端を上げると、今度はムッとした表情に変わるモモ。
やばい、幸せ。
感じる気持ちを惜しげもなく顔に浮かべていれば、森くんの「へー」という関心するような声が聞こえた。
「桃井って、渉ちゃんの前だと増えるのな。表情のレパートリー」
「え、そう?」
「うん。何か気を許してるって感じ」
「ちょっと聞いた!? モッ……なんで!?」
笑顔を向けて見上げたはずなのに、今度はベシンと額を叩かれて、そのまま強制的にドアの方まで押される。
だから! 扱い! 扱いに気をつけてモモ!
何かアグレッシブすぎると思うんだ! 雑っていうかヒドイっていうか! もうちょっと優しくして!
「じゃあなー、ふたりとも!」
「あ、バイバイ!」
「じゃ」
教室を出る前に森くんへ挨拶をして、あたしはモモに「扱いに気をつけて」と怒りながら下駄箱に向かった。