それでも君と、はじめての恋を
「モモ、どうしたの」
名前を呼んだ時にはすでにあたしへ視線を向けたモモは、少し間を置いてから口を開く。
「俺と何が違うのかと思って」
「え? ……全体的に違うと思う」
あたしの返答に満足しなかったのかモモは再び純を見て、不思議そうな顔をした。
そんなモモに純はなぜか口の端を上げて、元から後ろへ流してる自分の前髪を撫でつける。
「やっぱ1番は経験値の差だよねぇ~。何? モテる俺が羨ましい? だよね~分かる~」
「……」
モモの顔一帯に「違う」と書いてあるにも関わらず、純は気にも留めず話し続けた。
「桃井、女の子への接し方なんて分かんないもんね~。……まあそれは夜に伝授してあげるとして、師匠って呼んでくれてもいいよっ」
「バカか!!」
純に向けた言葉なのにモモがビクリと肩を揺らして、チャラ男はニヤニヤと楽しげに笑う。
「それとも恋愛初心者のために講座開く? なんなら渉と桃井の前で実践してみせても……うわぁ超楽しそ~」
全員真顔で言葉を失っていることに気付かない純の脳内って、ほんとどうなってるの……。
「監修とモデルは俺ねっ! 女の子モデルは~」
「もう純を植える方向でいいんじゃない」
まだ続ける純の言葉を遮った葵に、あたしは力強く頷いた。
「樹齢何千年とかになって崇められるようになれば、一生モテることになるよ純」
「じゃあ恋愛成就のご神木で~」
生き埋め計画をされてもヘラリと笑う純に疲れが押し寄せて、付き合ってられないとさじを投げる。
新たに掘り出した土を穴の外へ放り投げると、葵が「もういいんじゃない」と言ってモモを呼んだ。
「桃井はここに苗木置いて終わり。あとは純がひとりで穴埋めてよね」
「え~。手汚れるじゃぁん」
葵が自分の軍手を外して力任せに純へ投げ付けたのは言うまでもなく。生徒のほとんどが植樹を終えた頃には、夕食の時間が近付いていた。