それでも君と、はじめての恋を
「今日さ、純って来てないよね? 何か連絡あった?」
「純? 特に何も。サボりだと思うよ」
朝から姿の見えない純は、きっと昨日の夜遊びに出て朝帰りしたに違いない。いつものことだ。
「そっかー。今日遊ぶ約束してたんだけど、メールしても返ってこないからさぁ」
少し頬を膨らます彼女にあたしは苦笑を洩らしつつ、軽く手を上げる。
「あたしからも連絡しとくよ。会ったら言っとく」
「うん、お願ーいっ」
パッと明るくなった可愛い笑顔を見てから、再び教室へと足を伸ばした。
ホント、純のくせに生意気な……。
「おかえりー」
「ただいまー」
教室に入ると、先にお弁当を食べていた葵に返事をしながら辺りを見渡す。
「桃井なら自販機だと思うよ」
「あー違う、純。女の子が探してた」
「喧嘩? デート?」
「デート」
言いながら携帯と財布を手にして、「飲み物買ってくる」と葵に告げてから教室を出た。
純、純……。
着信履歴から純の番号に電話をかけると、すぐに洋楽の待ち歌が流れる。けれど曲は途切れることなく、リピートされたところで電話を切った。
……あたしがかけても出ないってことは、葵がかけても一緒だろうな。
やれやれと思いながら1階に辿りついてふと顔を上げると、モモと目が合った。
「わ! ……ビックリし、た……」
モモの腕に収められた缶コーヒーやペットボトルに落とした視線はすぐに、探していた人物に向けられる。
「純!? 何それ、どうしたのっ!?」
モモの隣に立っていたのは先程電話をかけたばかりの純だったけど、明らかにいつもと様子が違かった。
ムスッとして、あたしの問い掛けに応じない。何より、口の端と頬骨のあたりに痛々しい痣があった。