それでも君と、はじめての恋を
上段を持ち上げたモモの瞳に映るのは、おかずが入った下段。
色合いが良く見えるように頑張ったつもりなんだけど、改めて見るとなんか微妙……!
無理やり入れたミニトマトひび割れてるし! 野菜炒めの上に乗っけたタコさんウィンナーの顔はブッサイクだし!
「いただきます」
「……ど、どうぞ」
お弁当箱から顔を逸らしたあたしは自分の指に視線を落とす。手を合わせたり、指を絡ませたり、爪を見たり。
ドキドキして胸が苦しい。緊張して、息が詰まる。
……フライドポテトの牛肉巻き、巻くの難しかったな。タレが甘すぎたかもしれない。逆に野菜炒めは塩コショウ振り過ぎたかも。
「……これ何」
「え!?」
モモの声に顔を上げると、箸が指し示していたのは2つ入ってる丸い揚げ物だった。
あ、わ……おにぎりもおかずも減ってる……!
「……えと、それは、かぼちゃのコロッケ」
「手作り?」
「う、うん。お母さんが得意で、教えてもらった……」
若干焦げたけど。多分、味は大丈夫だと、思いマス。
答え終わって視線を泳がせたあたしは、耳に届いたサクッという音に胃の底がきゅっと痛くなる。
ああ……人に作ったものを食べてもらうって、とてつもなく緊張するんだな。
ほとんど初めてに近い料理で、それを食べてくれるのがモモだから、なのかもしれないけど。
「うまい」
「――……」
「全部うまい、けど。これが1番」
これ、という抽象的な言葉だったのに、あたしはどれのことか分かっていた。期待していたと言った方がいいのかもしれない。
そうだといいなって思ってたから、箸が添えられたかぼちゃコロッケが目に入った瞬間、胸が熱くなった。
「湊も好きそう」
「……」
ずっと見れなかったモモの顔。目が合ったのに何も言えなくて、モモがお弁当箱に視線を落として初めて返事をしなくちゃと頭の隅で思った。