それでも君と、はじめての恋を


「――……」


タイミングがいいのか、悪いのか。


手に握っていたままの携帯に電話を掛けてきたのは、1週間連絡を取っていなかったモモだった。


「――はい」


自分の声がどこか冷たさを含んでいることに気付いて、眉を寄せる。


……あたしまだ、怒ってる。


『渉?』


そうだけど、何?なんて頭の中で返事するけれど、1週間前のメールを無視してから3日目にかかってきた電話にも出なかったのだから、モモだって言いたいことはあるだろうな。山ほど、とまではいかなくても、それなりに。


『……聞こえてる?』

「聞こえてるよ」

『……、……優木のことだけど』


今なんか言い掛けたな。
そう感じ取ったけれど口には出さず、「うん」とだけ返事をして体を起こした。


『逢ってる?』

「……」

逢ってたら何なんだろう。葵の様子はどう?って、また聞きたいのかな。


「逢ってるし、さっきも電話してたけど……何?」

『……池田が電話しても繋がらないって言ってたから』


ああ、葵もそんなこと言ってたな。純のテンションに付き合える自信がないとか何とか。


あたしも先週1度だけ純から電話がきて、出たけど、『あ、もっし~?』と言われたから即切ったんだ。


黙っていると、いつの間にかモモすら口を閉ざしていることに気付く。


かと言って言葉を発することをしないあたしは、口を開いたらろくなことを言わないと分かっていたからだった。


この1週間落ち着いていたはずなのに、あの怒りは消えることなくまだ潜んでいたらしい。見つけた途端、ふつふつとわき上がってくる。
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