それでも君と、はじめての恋を


「ダメかと思った」


そう言ったあたしに桃井くんはフッとまた小さく笑って、ドリンクカップに視線を落とすと、ストローをクルクルと回す。


「矢吹が詰まるから、何事かとは思ったけど」

「……緊張したんだよ」


あたしの目を見ないまま少し微笑む桃井くん、もといモモ。


嬉しい。幸せ。……好き。

他の言葉は、出てこない。


近付けた、確実に。
仲良くなれてると、思う。


あたしは電話帳の桃井 寶という文字を消して、モモに直す。そのままメール機能を立ち上げて、自分の電話番号を本文に貼り付けた。


送信完了画面を見る前に携帯を閉じて、名前を呼ぶ。


「モモ」


視線を交わらせたモモに、あたしは満面の笑顔を見せた。同時に鳴り響く、着信音。



「矢吹じゃなくて、渉って呼んで!」



一歩ずつ確実に、君と近付きたいよ。


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