お前じゃない
 立ち上がり、ドアを開けると久美子が立っている。


「あっ、お風呂から出た? ハルが出たら入ろうかなと思って」


「僕、結局入らなかったんですよ。坂上が風呂に入っているはずだから、出たら二人に声かけるって言ってましたけど、あれっ? 随分長いですね」


 ハルは、部屋の掛け時計を見ながら久美子に話した。

 おかしいな、いくらなんでも坂上が風呂に入って長すぎる。それか、坂上は先にポッコリ殿に声をかけて、ポッコリ殿が今お風呂に入っているのか?

 ハルは首を傾げると、久美子と一緒に、坂上の部屋に行きノックした。しかし返事もなくノブを回すと、すっと抵抗なくドアが開いた。部屋の中を覗いてみたが、坂上は居なかった。


「久美子さん、ポッコリ殿の部屋行ってみましょうか? もしかしたら一緒にお風呂入ってるのかもしれませんね」


「そうね。女の私じゃ一緒に入れないものね」


 こうしてハルと久美子は、ポッコリ殿の部屋をノックした。
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