図書室

「…………」

そこには木下先輩が立っていた。

長かった髪をバッサリ切って、目を隠していた前髪も無くなっていた。

別人のような木下先輩がいた。

「驚いた?」

私は素直に首を縦に振る。

だよね、と笑いながら木下先輩は私の方に近づいてきた。

木下先輩は私のところに来て床に座った。

「座ろう?」

床を手で軽く叩いて聞いてきた。

私は言われるがまま、床に腰をおろした。

そのままお互い喋ることなく、沈黙が続いた。

「あれから…学校、来てましたか?」

最初に口を開いたのは私だった。

「あれから?」

「保健室のときから…」

木下先輩は顔を下に向けてあぁ、と呟いた。

「来てなかった、と思う」

「なんで…急に、いなくなったんですか?」

ずっと気になっていた。

木下先輩がいなくなってから、毎日物足りなさを感じていた。

私が木下先輩を見ると、顔を下に向けている。

「実は、保健室のあの時から考えていたんだ」

下に向けていた顔を上げて言った。

「今まで本当にこの目が嫌だった。でも、あの日真奈美ちゃんに笑った顔が好きだって言われて、素直に嬉しいって思ったんだ」

「目のことを言われたわけでもないのにね。切ろうって思ったんだよ…。それでバッサリ切った」

木下先輩は前髪を切るジェスチャーをする。

「それでも、学校にいなかった期間が長すぎます」

私が少し怒った口調で言うと、

「情けないんだけど、勇気が出なかったんだ。それで結構休んでた」

ごめんね、そう言って私の頭を優しく撫でてくれる。

顔を木下先輩に向けると、視線が合った。

私と木下先輩、お互いの目に吸い込まれるように顔を近づけ、キスをした。

目を開けると目の前には木下先輩の顔があって、目が合うとまた、唇を寄せた。

「私、先輩が好きです。笑った顔も先輩の目も、全部好きです」

顔を離して、私が真っ赤になりながら言うと



「ありがとうございます」




木下先輩は優しく微笑んだ。


< 13 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop