コッペリアの仮面 -琺瑯質の目をもつ乙女-

部屋に入り込んだ私は肩で息をしていた。
こんなに一生懸命に走ったのは何時だっただろう。久しい事は確かだ。少しの運動でも堪える。躯が悲鳴を揚げる。
燭架にキャンドルを立てて僅かな灯を。役目を終えた燐寸(マッチ)は焔に身を焦がす。

私はアクセサリーやリボン等の装飾物を外し、クローゼットの中をチェックした。小さい部屋の様だ。

――沢山有る。服だけでも百着は有るんじゃないかしら。アクセサリーも靴も山程有る。
丸で一国のお姫様にでも成った気分だ。煌めく貴石達の輝きと云ったらレプリカにはとても見えない。

結局、今着ている服と大差無いほどフリルが付いた淡いパステルカラーのネグリジェに着替えた。
明日は少なくとも、六時には起きなくてはならない。此の部屋には時計が無い為、注意しなくては。

逃げる機会が有るなら其の時。取り敢えず、朝は屋敷を隈無く調べなくては。
脱出為る為ならば窓の一つや二つ、割る覚悟位有る。

私は其んな事を考え乍ら目蓋を閉じた。
薔薇の馨しい匂いが私の鼻腔を擽っていた。


鳥籠ノ中ノオ姫様・完

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